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紅霞後宮物語第六幕

 

紅霞後宮物語 第六幕 (富士見L文庫)

第五幕で小玉と文林の間に大きな壁ができ、それが僕にはとてもショックで、このblogにもそう書きました。二人の間にはもともと「価値観の相違」という断絶がありました。しかしそれでも絆を積み上げていっていると思っていたのに、小玉が断絶の前に壁を作った、これ以上近寄らないと、一線を引いた。僕にはそれがとても酷いことのように見えたんです。二人の関係がそんなもので終わってしまうのは、僕には耐えられない。

 

でも、そんな不安は第六幕を読み始めてすぐに消えました。全体的に六幕は状況は大きく動かず、小玉と文林の気持ちの整理というのが焦点でしたね。なんだかんだ小玉は、壁を築いたところで文林のことを考えずにはいられないんだなと。小玉がぽろっとこぼした心情を梅花がつかみ取り上手くたぐり寄せ、良い方向に導いてくれました。五幕では梅花が病に伏せっていたからダメだったのか!梅花さんには末永く健康でいて欲しいものです。

 

「あたしは、辛かった!」と小玉が文林に告げたとき、僕は涙が出ましたよ。僕はずっと、そうして欲しかった。二人はなまじ相手のことを理解していると思っているから、自分の気持ちを相手に伝えるということを、してこなかった。でも本当は違うんですよ。お互いに知らない所はあるし理解できない所はあるし、相容れない所はある。それでも一緒にいたいなら、よくよく話し合わなければならない。机を挟んで手を伸ばす二人の姿に、僕は感動しました。ようやく最初の一歩だ、と。きっと小玉なら溝を直視することもできると思います。文林はわかんないけど……どうかこれから見出した道をたがわず、幸せになって欲しいです。

五幕六幕は小玉が文林との間にある溝を自覚して受け入れるまでの、言わば前後編だったんだなと今は思います。あとがきでもそのようなことを書かれていて「五幕六幕は夫婦間の愛情について考えてみようとした巻」とのこと。こちらで小玉や文林について、愛について多少解説されていて、うなずける所もあり、なるほどと思える部分もあり、よくわからない所もあり、なんだかんだで僕は小玉と文林のことよくわかってないなーと、もう一度一幕から読み直したい気分になりました。そしてこのあとがきと本編で、大きく状況が動く前に六幕一冊使って小玉と文林の心情を書いてくれた作者さんのことを、信頼できる人だなと思いました。信頼できるというのは、僕が大事だと思っているモノを大事にしてくれる、というくらいの意味です。僕はこの先、この作者さんが僕にとって面白くないと思える作品を出しても、見捨てないと思います。読み続けると思います。少なくともこの六幕にはその価値があると、僕は感じています。これおもしろいよ。